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 ★ニュース『生きいき憲法』



学習講演会18の記録
   
       
  「橋下・大阪維新の会」


日程:2012年3月26日(月)18:00〜18:50
会場:豊島区民センター
話題提供:島田修一氏(九条の会東京連絡会事務局、弁護士)
参加者:23人

島田修一さんより橋下徹大阪市長と彼がひきいる大阪維新の会について話題提供がありました。そのレジュメを掲載します。

経過

08年2月 橋下府知事当選
10年4月 政治団体「大阪維新の会」設立
11年統一地方選 府議会過半数
 6月 府議会「国旗掲揚・国歌起立斉唱条例」「議員定数削減(109→88)」
強行採決
 9月 「職員基本条例案」「教育行政基本条例案」提出
 11月 府知事・大阪市長ダブル選。市長選60.92%(43.61%)。争点@大阪都構想A職員基本条例B教員基本条例、橋下「ワンセット戦略」。し かしNHK調査「今回の住民の投票行動は『大阪再生』への期待が6割、都構想は1割程度」
12年2月
・「職員基本条例案」「教育行政基本条例案」再提出、「府立 学校条例案」提出
・市議会「国旗掲揚・国歌起立斉唱条例」強行可決(府と同一内容)
・市長命令「労使関係に関する職員のアンケート調査」(無回答は処分)
→府労委勧告「支配介入の恐れ」
 3月 府議会「職員基本条例」「教育行政基本条例」「府立学校条例」強行可決(維新の会、自民、公明)
*市では劇的行政改革進行中
@人件費削減(12年度2割減、ターゲットは地下鉄・ゴミ収 集等の現業部門、全職員の3割1万2000人。ゴミ収集職員の年収平均650万円、市バス運転手739万円)
A市長選で対立候補支援した労組に対し組合事務所撤去要求。「ギリシャを見てください。公務員組合をのさばらしておくと国が破綻する。日本全国の公務員の 組合を改めていく。そのことしか日本の再生の道はない」
B民営化推進(地下鉄、水道、市立幼稚園)

大阪都構想

・大阪市、堺市を廃止して人口30〜50万人の特別自治区に再編。
・「成長戦略」→特別自治区での規制緩和、税優遇による国際的企業支援、関空・阪神港国際拠点のインフラ整備、高速道路整備
・1人の指揮官に「権限と財源」集中。大企業優先政策を政令市長・議会という「邪魔者」なく一元的、効率的に進める体制へ
・「2018年までに関西州実現、道州制が僕のゴールだ」
・都構想と関西州の共通点は「小さな政府」をめざす新自由主義的改革。国政という「上からの新自由主義」の限界を突破するため、地方自治を口実とする「下 からの新自由主義」を推し進めるもの。
・堺市議会否決(12年3月)

国旗掲揚・国歌起立斉唱条例

目的:
府民とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し、それら を育くんできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資する。
義務:
@執務時間において見やすい場所に国旗を掲げる
A教職員は起立して国歌を斉唱
本質:
戦前は「非国民」、今回は「非府民」をあぶり出し徹底した排 除を行う。
違法:
国旗国歌法の立法者意思「強制しない」。条例は法律の範囲内 でのみ制定可能。強制を本質とする本条例は国旗国歌法と矛盾し違法。

職員基本条例

前文:
これからの都市間競争を勝ち抜くためには、新たな地域経営モ デル(大阪都構想)が必要。現在の硬直した公務員制度下で実現することは困難。「民」主体の社会を実現するため公務員制度改革を行う。公務員という理由だ けで特権的な身分階級のごとく扱ってきた人事運用から決別。
目的:
公務員組織をトップの私兵集団に変貌。違反に懲戒処分。上意 下達・職務命令絶対主義。
免職:
「廃職又は過員」を生じたときは分限免職
引下:
職員の給与水準は「同一労働同一賃金の原則」に基づき民間の 同一職種又は相当する職種と同じ水準とする。
問題点:
・公務員の身分保障は公務員法制の根幹をなすもの。公務員制 度は法律(地公法)で定めるべきで、条例は法律の範囲内でしか制定できない。
・公務員法は、法定の事由によらない限り降任・免職されることはなく、給与も一定額が保障される。これにより、職員は不当な圧力によってその地位を左右さ れることなく、安心して「全体の奉仕者」として公務に従事できる。これが公務員の身分保障(国公法75条、地公法27条)。公務員の身分保障は労働基本権 制約に対する代償措置の側面。
・強烈な公務員敵視、統制管理、知事に異を唱える職員の存在は許さない姿勢。
・地公法「降任し、又は免職することができる」。免職しか選択肢がなく、かつ免職が任命権者の義務だとするのは違法。
・「同一労働同一賃金の原則」は、公務員の賃金は高いとして民間並みに引き下げるキーワード。

教育行政基本条例

上位下達:
知事は「教育振興基本計画」作成。府教委は「計画」を実現す る具体的な教育内容を盛り込んだ指針を作成し校長に提示。校長は「計画」の実現に向けて学校運営を行う。教員は教委決定、校長職務命令に従う。府知事→府 教委→校長→教員の上位下達の貫徹。
懲戒:
同じ職務命令に3回違反で免職
競争:
3年連続定員割学校「再編整備の対象」(府立学校条例案)
問題点:
・戦後の教育行政は、政治(多数決)によって教育内容が歪め られないようにすべきであるとの原則(一般行政から相対的に独立)に基づいて行われてきた。その歴史を敵視して教育行政を政治の統制の下に置く。
・06年教基法改正は、例外なき市場原理導入により国民はバラバラとなるから、教育を通して国民を統合する必要ある。そこで愛国心教育を強化。しかし、 「不当な支配」を落とすことができなかった。旭川学テ最判「教育内容に個別具体的に関わるようなことを教育行政が行うことは『不当な支配』に該当し許され ない」が壁となった。
・教育の最も重要な理念「個人大切」の教育を後景へ。子どもを「人材」と捉えて「人格」は語らない。学校は財界のための「人材」を作り出す工場、校長は工 場長、教員は職工、子供はそこに流れてくる部品。戦後教育の否定。
・最判→君が代起立斉唱の職務命令に違反した教員の処分について、2回違反で減給処分は違法(12年1月16日)

思想調査

・三菱樹脂事件最判「採用の際に学生運動への参加の有無など一定の外形的行為について申告を求めることは思想信条の自由に違反」(73年)

橋下ポピュリズムの背景・手法・政策・影響

背景:
・自公政権、09年に始まった民主政権の双方に対する幻滅か ら国民の中に「二大政党制」への懐疑が生じつつある。国政の体たらく、将来不安、大阪経済の行きづまりなど従来の政治的枠組みでは「お先真っ暗」と考える 府民が、何か展望を見いだせる政治家の登場を期待。「何かしてくれそう」な政治家。これがポピュリズム首長の登場を促している。
・「無党派市民が支えている」のイメージに反し、実は自民・民主党の支持層が基盤。国政で自民や民主に票を投じた新自由主義・新保守主義の支持層が、地方 では首長翼賛地域政党を支えている。
手法:
・「仕事しない公務員」「労組が支配する官公庁や学校」「既 成政党が支配する議会」などを「敵」として、これと「闘う姿勢」を演出。
・公務員や議員は「特権階級」、労組や年金生活者は「既得権益者」とのレッテルを貼れば、人々の「憎悪」はそれらの集団や職業に向かう。ナチスが設定した 「敵」がユダヤ人やコミュニストであったように、日本の自治体ポピュリズムにとっての「敵」は「議員」「公務員」「教職員組合」。
・竹原阿久根市長は、「平均年収650万円」とされる市職員給与の公表により、「平均所得200万円」とされる阿久根市民の「庶民感情」を見方につけた。
・問題の単純化と二項対立式の「敵」の設定をもって有権者の感情に訴えかけ、新自由主義の犠牲となる層からも支持を調達。
・選挙を自分への信任投票と位置づけ、その結果を自身への「民意」の支持とみなす。その民意を背景に反対派を排除し、多数決でもって絶対的権力を掌握。民 主主義とは「多数決」、少数意見が尊重されなければならないとは考えない。
政策:
・新自由主義の結果として生じる貧困・格差がもたらす社会の 分裂を覆い隠すイデオロギーとして「自立した個人の自己責任」を強調。また、自己責任イデオロギーだけでは十分な弥縫が困難な場合、ナショナリズに訴えか ける新保守主義的な政策を同時に採用。新自由主義と新保守主義のドッキング。
・維新八策→@統治機構の作り直し(国の仕事を絞り込む、内政は地方に任せる、道州制)、A財政・行政改革、B公務員制度改革(人件費削減)、C教育改 革、D社会保障制度改革、E経済政策・雇用政策・税制(TPP推進)、F外交・防衛、F憲法改正(首相公選、参院廃止、96条、9条)
・船中八策(坂本竜馬)
1 天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令宜しく朝廷より出ずべき事。
2 上下議政局を設け、議員を置きて万機を参賛せしめ、万機宜しく公議に決すべき事。
3 有材の公卿諸侯及び天下の人材を顧問に備え官爵を賜ひ、宜しく従来有名無実の官を除くべき事。
4 外国の交際広く公議を採り、新に至当の規約を立つべき事。
5 古来の律令を折衷し、新に無窮の大典を撰定すべき事。
6 海軍宜しく拡張すべき事。
7 御親兵を置き、帝都を守衛せしむべき事。
8 金銀物貨宜しく外国と平均の法を設くべき事。
影響:
・ダブル選後、マスコミは維新の会の広告塔と化している。メ ディアが彼らの言動や行動を無批判にとりあげるだけで、住民への大きな宣伝効果。
・「普遍性」→現業職員はどこの自治体にも存在。大阪市で給料を「民間並み」にした場合、他自治体住民から「大阪市でできて、なぜ自分たちのところででき ないのか」と他自治体へ波及することは避けられない。維新の会「改革」は普遍性を帯びる危険。
・「維新の会」を名乗る政治団体や地方議会会派が登場(松山維新の会、高槻維新の会、西宮維新の会)
・大阪維新の会の動向は、国全体を牽引していく可能性さえ帯びてきた。行きつく先は「国家改造」。
どう対抗していくか

以上
(本レジメは主に榊原秀訓編著『自治体ポピュリズムを問う』:自治体研究社に依るものです。詳しくは同書を参照してください)


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