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★ニュース『生きいき憲法』
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大学習会の記録
「野田政権下での
比例定数削減・選挙制度の「改正」を
どうみて、どう立ち向かうか」
日程:2011年10月31日(月)18:00〜20:20
会場:けんせつプラザ東京
講師:坂本治氏(自由法曹団弁護士)
参加者:?人
10月31日の第6回実行委員会で行われた坂本修弁護士の標記講演の要旨は以下のとおりで
す。(文責・島田)
1
東日本大震災・福島原発事故の後、政治の「劣化」をさらけだした二大政党の混迷が続く中、9月2日、野田連立内閣が発足した。この政権は、菅内閣が進め
てきていた公約違反、国民無視の政治を一層反動的に推進するための政権である。菅政権下の多重的な改憲策動、そのための“劇薬”とも「トロイの木馬」とも
言える比例定数削減の策動の危険も一層強まってきているとみなければならない。私たちはそのことを直視し、新たな決意で立ち向かわなければならないと強く
思う。
2
野田首相は、歴代首相で例のない組閣前の経団連詣でを行い、自民・公明と党首会談をし、公約放棄の三党合意を再確認した。野田内閣の性格は、日米同盟強
化および財界直結の「翼賛政治体制推進内閣」である。
野田首相は、首相就任の前後一貫して「大連立」を呼びかけている。「大連立」でどんな政治を行うというのか。中身は、@消費税増税と法人税減税、A普天
間基地の辺野古移設、BTPP参加推進、C原発の長期間維持、停止中の早期運転再開である。これは、09年総選挙での民主党の公約を放棄し、ひたすら自公
政治の路線にすり寄り、財界とアメリカの要求に忠誠を誓うものにほかならない。
このような政治はそのすべてにおいて国民の利益に反する。総選挙で自公政権を倒して政権交代を実現し、参院選挙で民主・自民両党を敗北させて「二大政党
ノー」の審判を下した国民の願いを真っ向から裏切るものであり、国民との矛盾は、さらに深まり、広がるに違いない。にもかかわらず、野田政権が動きを強め
ているのが、上記@〜Cを共同の政策とする「大連立」である。国民を裏切り、ひたすら財界とアメリカの要求の実現に「翼賛」するために、力を合わせるとい
う「翼賛的大連立」がその本質である。
3
重要なことは、「大連立」での反動諸策に、改憲と比例定数削減が間違いなくビルトインされているということ。前者の改憲は、解釈改憲・立法改憲(恒久海
外派兵法)とともに、明文改憲のための衆参両院での憲法審査会の立ち上げと審理開始がある。
野田政権による解釈・立法改憲のスピードアップは、前原政調会長のワシントンでの講演(9月7日)で鮮明になっている。彼は、@他国軍の防衛のため自衛
隊の武力行使を認めるようにすべきだ(PKO法の改正、集団自衛権の容認)、A武器使用三原則の見直し、を強調している。明文改憲の準備作業もさらに加速
している。民主党は5月18日、国民投票法制定時の附帯決議(18歳選挙権、地方公務員の国民投票運動規制の削除、マスコミの有料宣伝の規制、最低投票率
設定の検討など18項目)には何一つ手をつけずに、審査会規定を自公と足並みを揃えて制定し、衆参両院の憲法審査会の委員を選任した。そして、来年3月ま
でに党として憲法改正について態度をまとめることを確認している。自民党谷垣総裁も、サンフランシスコ条約の60周年にあたる来年4月に向け、同党の改憲
方針をまとめる方針を明らかにしている。自民党は、大震災は非常事態の規定をもたない憲法の危うさを浮き彫りにしたと主張しているが、前原民主党憲法調査
会長もこれに同調。大震災を利用して、改憲を図るという恥知らずな二大政党の大連立は、解釈改憲・立法改憲に拍車をかけるだけでなく、明文改憲のための策
動もヒート・アップする危険が強い。
4
比例定数の削減はどうか?野田首相は代表選の政権政策で「衆院定数80削減、参議院定数40削減を目指す」と明記し、代表選最終演説で削減に「全力をあ
げてたたかっていこう」と訴えた。彼は自著『民主の敵』で、「私個人としては小選挙区300だけでいい」と主張し、その実現は「自民党と民主党が小異を捨
てて協力できるかどうかにかかってくる」と語っている。まずは「大連立」による定数大幅削減、そして終着点として完全小選挙区制の実現というのは、彼の強
い持論である。
自民党は党内に中選挙区制論もあり、直ちに比例定数削減や完全小選挙区制に賛成しているわけではない。「大連立」の対象となっていると思われる公明党は
比例削減には反対であり、かつては中選挙区制を主張していたが、現在は比例代表との連立制に傾いていると伝えられている。しかし、民意を排除して二大政党
での議席独占は支配勢力の長い間の念願である。なによりも、国民の意思に反する悪政を強行し、“壊憲”国家を実現しようというのは、自民党さらには民主党
を含めての支配勢力の総意であり、しかもそうした要求は大災害と原発事故によって急速に深まってきている。“支配の危機”が、彼らの比例定数削減の要求を
一層切迫したものにしている。3・11以前に比べ、そして野田政権になっての策動の強まる危険を、私たちは直視しなければならないと強く思う。
5
重大な局面に私たちは直面しているが、反面、策動に反撃して選挙制度の改悪を阻止し、民意を反映する制度の実現に進み得る新たな条件も生まれていること
に確信を持ちたい。利潤至上の構造改革の痛みを知って、「政権交代」を実現した国民は、民主党の裏切りを経験して、「二大政党制」政治の正体を知った。更
に3・11大災害、とりわけ原発事故が、巨大な“政治的人災”であることを骨身にしみて痛感している。民意が歪められた政治の“大いなる災い”を知った国
民は、“政治的人災”を作った二大政党を選ぶしかなくなる選挙制度の誤りをつかみとることができる。小選挙区制導入後の17年の悪政と、今回の大災害に直
面して、安全で、人間らしく生き、一人ひとりが幸福を追求していくことのできる社会―憲法の生きる日本―をかつてない思いで多くの国民が求めているのは確
かである。そうである以上、そうした国政にするために、民意を排除する定数削減を阻止し、私たちの一票を、“宝の一票”にする「比例を軸とする選挙制度」
にしよう、という要求には国民多数派を結集する力を持つ
大義がある。
もちろん、大義は自動的勝利を保証しないし、「法案上程を許さない世論」を間に合うスピードで作り上げるのは簡単なことではない。しかし、「たたかって
こその勝利」である。真実を知った人々が、それぞれに声をあげ、足を踏み出せば、勝利の扉を開く新たな条件は目の前にあると、私は強く思う。
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