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 ★ニュー ス『生きいき憲法』




学習講演会の記録

「巨大地震と福島原発事故」


日程:2011年3月日(月)18:00〜19:00
会場:けんせつプラザ東京(東京土建本部)5階会議室
参加者:38人
講師:野口邦和氏(日本大学教授)

1 巨大地震の発生

今、容易ならざる 事態が起きている。3月11日発生した東北地方太平洋沖地震 は、1446分に三陸沖の深さ約24kmで発生したマグニチュード9.013日に当初の8.89.0に修正)の太平洋プレートと北米プレート境界域における海溝型地 震。気象庁によれば、M9.0は関東大震災のM7.9を上回る国内観測史上最大、アメリカ地質調査所によれば1900年以降世界でも4番目の規模の地震。巨大地震と巨大津波により 死者1万1063人、安否不明者1万8606人の計2万9669人という大きな被害を出し、1都9県が災害救助法の適用を受けた。原発は全国で54基が稼働中、年間電気量の30%を占めるが、津波によって被害を受けたのが福島第一原子力発電 所。

2 原子力発電と火力発電との違い

火力発電は燃料の 供給を止めれば安全に停止できるが、原発では制御棒を挿入して核分裂連鎖反応を止めた後も原子炉内に存在する膨大な量の放射性物質からの熱が発生し続け る。この熱の発生を止める方法はなく、冷却し続ける必要がある。火力発電では燃料は外部から常時供給されるが、原発では数年分の燃料が原子炉内に存在する から、何らかの原因で原子炉内の膨大な量の熱や放射性物質が環境に放出されると大災害となる。一度大災害が起これば、途中で核燃料を取り出すことはできな い。

3 原発の安全性の基本

第一原発1〜6号 機は1970年代、第二原発は80年代に建設。原発の安全の基本は「止める」「冷やす」「閉じ込め る」だが、今回は「冷やす」「閉じ込める」が失敗。原発はウランを燃料とし、核分裂連鎖反応を行っているから原子炉内には大量の放射性物質が存在する。 従って、トラブルの発生による放射性物質の異常な放出に伴う周辺への影響を防止することが安全確保の基本となる。このため、原発の設計においては多重防護 の考え方を採用している。具体的には「異常の発生防止」、異常が発生しても「異常の拡大及び事故への発展の防止」、さらに事故の発生に到っても「原子炉を 止める、冷やす、放射性物質を閉じ込める」という何重にもわたる安全設計を行っている。

4 津波が原発を襲う

第一・1〜3号機および第二・1〜4号機が地震を検知して自動停止した。外部 電源喪失事故が起こって外部からの電力供給が絶たれたため、緊急炉心冷却装置が稼働しなかった。巨大地震にともなう巨大津波に襲われ非常用ディーゼル発電 機もすべて止まった。この結果、原子炉の冷却機能が失われ、核燃料の温度上昇、冷却水の温度上昇と一部蒸発、核燃料棒の上部露出、核燃料の損傷、圧力容器 内の気圧上昇、格納容器内の気圧上昇、水素爆発、燃料被覆管の破損、燃料被覆管の溶融、燃料棒の溶融。冷却水位の改善のため仮設ポンプで海水注入、その後 真水に切り替えて注入する状態がずっと続いている。使用済み燃料貯蔵プールの水温上昇、3号機と4号機ではプールの水が蒸発して使用済み燃料が一部露出し た。

5 従業員の被ばく

3号機の冷却装置 の復旧作業中、タービン建屋地下1階でケーブル敷設をしてい た男性作業員3人が被ばく。3人は2030代で東電の協力会社の作業員。内2人は水深15cmのところで、くるぶしまで浸かっていた。靴の上部から水が入っ たらしい。水面での線量率は400mSv毎時に達しており、 ベータ線火傷の可能性があるとみて福島県立医大病院、次いで放射線医学総合研究所で治療。被ばくした水たまりから通常の原子炉内冷却水より1万倍強い放射 能を検出と東電が発表。東電によると、第一原発の事故で被ばく線量が100mSvを 超えた作業員は3月25日現在で累計17人。

6 避難・屋内退避

双葉厚生病院から の避難者約60名を含む133名を測定した結果、13000cpm以上の23名の除染を実施した。政府は、第一原発の半径3km圏内の住民に避難指示、半径10km圏内の住民に退避指示、12日には半径10km圏内に避難指示。第二原発においても半径3km圏内の住民に避難指示、半径10km圏内に屋内退避指示、続いて半径10km圏内に避難指示。15日には第一原発の半径2030km圏内の住民に屋内退避指示。しかし「半径」で避難地域を設定す るのは、放射性物質の放出は風向きで異なるから問題だ。

7 海の汚染

26日、南放水口付近で排水の濃度限度の1850.5倍のヨウ素131が検出された。29日に同地点で採取した海水ではヨウ素131は排水濃度限度の2572.5倍、セシウム134395.5倍の濃度。これまでに海水から検出された中では最も高い値。 これは南放水口付近から放射性物質を含んだミズが漏れ出ている可能性が大であるから、早急に放出源を見つけて塞がないと深刻な海の汚染を引き起こす可能性 がある。

8 風評被害

流言飛語・デマ・ 風評被害をなくすためには、行政と事故を起こした当事者はできる限り事故情報を発表し、丁寧に説明する必要がある。あいまいさをなくすには研究者が前面に 出るべきだが、今回の事故対応では政府や東電がそれらを実行したとは言い難い。

9 今後の事故対応

@外部電源を確保し、冷却用ポンプを稼動させ、原子炉や使用済 み燃料を冷却する。A放射性物質が漏れ出ている箇所を修復し、放射性物質が漏れ出ないようにする。B放射性ヨウ素による汚染は3ケ月でほぼ問題でなくなる ので、その間は暫定規制値を超える食品と飲料水の出荷制限、摂取制限で対応する。C事故収束後、放射性ヨウ素の消滅を待って放射性セシウムの汚染状況を県 内中心に調査し、その結果に基づき避難住民をどこに戻すか否か、立ち退きをする地域はどこか、農業が一時的・長期的に制約を受ける地域はどこか等について 判断・対応する。D被害・損害を受けた人びとの補償問題に対処する。

10 原発事故から何を学ぶか

@外部電源喪失事故に備えた非常用ディーゼル発電機が津波に よってすべて止まってしまったのはなぜか。設置場所・設置方法に問題があったと考えざるを得ない。A使用済み燃料貯蔵プールの冷却系停止後の事態は十分予 測できたはずである。迅速な対応が遅れたのはなぜか。B1〜4号機ともほぼ同じ事故経過をたどったのはなぜか。C事故情報に関する東電の隠蔽、政府発表の 情報が少ないのはなぜか。D70年代の古い原発の存続を問 う。E大規模な放射能放出を伴う原発の大事故は常に予想外の原因から起こり、予想外の経過をたどって拡大し、予想外の結果をもたらす。事故の現実から謙虚 に学ぶことが何よりも大事である。

(以上は要旨です。)


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