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学 習講演会
「憲法9条をめぐるあたらしい国会情勢」

日時:9月8日
会場:豊島区民センター
講師:高田健氏(九条の会事務局、許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局)
参加者:55人


(1)総選挙が終わって
 今年の8月30日の衆議院総選挙は民主党の圧勝に終わりました。このことをどう評価したらいいでしょうか。まず1点目として、これまでの自公政権は改憲 策動を続けてきた政権ですから、この政権が倒されたのはとても良かったということです。私はこれまで憲法調査会(約200回)をすべて傍聴してきました。 そこで感じたのは明文改憲への強い執念でした。その策動の強まりが国民の危機感を高め、2001年5月3日の憲法集会が統一集会となり、2004年には九 条の会が発足するということになりました。今回の選挙結果には自公政権の改憲策動への国民の審判も含まれていると思います。2点目として、では新しい民主 党政権をどう評価するのか。これは難しい問題です。アメリカにおけるブッシュからオバマへの変化をどう見るのかという問題にも通じるものがあります。巷で は「大して変わらないよ」という評価もあり、これは一面で正しいとも言えますが、運動にとってどういう意味を持つかと考えると、やはり同じではないと思い ます。

(2)憲法問題から見る議席の変化
 マスコミが議員アンケートをしています。共同通信のアンケートでは民主党議員の56.5%が改憲に賛成していることになるのですが、よくよく見ると「9 条以外の部分的改憲」が多い。毎日新聞のアンケートでは当選した民主党議員の62%191人が9条の改憲に反対となっている。集団的自衛権についての政府 見解の見直しに反対は58%179人、アフガン自衛隊派兵に反対も63%194人といずれも過半数となっている。
 また、今回の選挙の特徴のひとつは「改憲派」が大量に落選していることです。憲法調査会の推進派・中山太郎をはじめ、新憲法制定議員同盟に加盟している 議員が大量に落ちていることです。これらのことは国民の護憲意識が今回の選挙を通じて国会に反映していることを示しています。
 しかし、もうひとつの特徴として、政党の議席占有率と世論(得票率)との乖離していることが指摘できます。民主党は308議席(占有率62%)ですが、 実は比例での得票率は42%しかない。社共は11%の得票率なのに議席占有率はわずか3%です。国民の意識は国会の議席数以上に護憲派が強いし、それを もっともっと国会に届けていかないといけないということだと思います。

(3)民主党の憲法・安保防衛政策
 では民主党の政策はどうなっているのか。実は民主党の「マニフェスト」でも憲法については実にわかりにくい。いろいろ推測して読むと、本心は変えたい が、できるだけ国民の納得の下で円満に変えたいということかなと感じます。もともと鳩山は2006年に『新憲法試案』というものを書いており、ここでは九 条の改憲はもとより、天皇の象徴「元首化」ということまで言っています。また小沢はフル区から国連の合意の下での自衛隊派遣論者ですから、そういう方向に 九条を変えたいという考え方の人です。
 では民主党というのはもう改憲派と見るべきかというとそうとも言えません。実は2004年に小沢一郎・横路孝弘合意というものが結ばれており、「九条の 明文改憲はしない。専守防衛の自衛隊とは別に国連待機部隊というものをつくってこれを派遣する」という、いわば解釈改憲路線でいくということが合意されて いる。そうしなければ民主党の統一がとれないと小沢が判断したからで、これまでの民主党の動きも今回の「マニフェスト」もこの合意線上で進んでいると思い ます。民主党は寄り合い所帯なので国民の運動や世論を反映しやすい、小沢もそういうことを強く意識しているのです。
 こうした点を考えたら、来年(2010年)5月18日に改憲手続き法(国民投票法)が凍結解除されるからということで「狼がくるぞ、狼がくるぞ」と「危 機感」を煽るような運動の進め方では良くないと思います。そういう運動論はこれまで国民が作り上げてきた運動やそれが政治を動かしてきたという現実を正し く見ていない。むしろ加藤周一さんの提起、つまり「改憲反対と言うだけの運動ではなく、解釈改憲阻止も含め、憲法を実際に活かし実現していく運動が必要」 という提起、これをきちんと地に足をつけて進めていくことが大切だと思います。
 改憲手続き法はその凍結解除までにやっておくことが附則としてつけられているのですが、それがやられていない。また参議院でつけられた付帯決議もやられ ていない。つまり凍結解除の前提が満たされていないものなのです。ですから、例えば、改憲手続き法の抜本的見直しを要求するような運動が大切だと思いま す。

(5)課題と展望
 私は現在、次のような課題が政治的にも重要だと考えています。これは九条の会事務局としての見解ではなく、私個人の意見です。1.憲法審査会始動反対。 2.給油新法の廃止法とアフガンへの非軍事的人道・文民支援。3.海賊新法の抜本的再検討。4.貨物検査特措法阻止と対話による朝鮮半島の緊張緩和。5. 米軍吉の再編強化に反対。6.次期「防衛大綱」策定をめぐるたたかい、安保防衛懇の「提言」の清算。7.比例定数削減と小選挙区制に反対する広範な共同行 動。8.鳩山氏の「改憲議員同盟顧問」辞任要求。9.九条を掲げて、非核3原則の堅持と核廃絶への国際的世論形成。10.臨時祝日法(11/12)奉祝国 会議員連盟で鳩山が副会長、小沢が顧問の問題、などなど。特に8.の鳩山「改憲議員同盟顧問」辞任の要請行動についてはとても広がっています。
 自民党、公明党、民主党の一部の議員たちの改憲策動はつづくでしょう。アメリカの集団的自衛権行使の要求もつづきます。明文改憲に反対し、解釈改憲を阻 止し、憲法を生かす運動、その足場を草の根からしっかり作っていく、そういう運動を進めていきましょう。


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