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学習講演会
「核兵器と憲法9条」


日時:2009年9月29日(月)18:30〜
場所:豊島区民センター
講師:野口邦和氏(日本大学教授、放射化学専攻。原水禁世界大会運営委員会代表)
参加者:47人

1 日本が核兵器を保有できない理由
 その理由は4つある。1つは憲法9条の存在、2つは原子力基本法第2条の存在、3つは非核三原則の存在、4つは核兵器不拡散条約(NPT)の批准。
 しかし、政府は9条の下でも「保有」は可能としている。「自衛のための小型核兵器をもつことは違憲ではないが、非核三原則により、政策上保持しない」 と。また、保有のみならず我が国を防衛するために必要最小限度であれば「使用」も可能としている。この立場からすると、核を保有するために9条を改正する 必要はなく、改正するとすれば原子力基本法第2条となる。しかし、9条1項は「武力による威嚇又は武力の行使は・・・永久にこれを放棄する」、2項は「戦 力はこれを保持しない」と規定しており、核兵器の保有は武力による威嚇だし戦力でもある。和田進教授(神戸大学、憲法学)によると、9条1項はパリ不戦条 約(1928年)および国連憲章(1945年)をモデルにして作成されたもので、当時の世界における国際平和構築に関する人類の到達点を表現したもの。9 条2項は当時の人類の到達点の先を行っているもの。この飛躍の背景には広島・長崎の原爆被害がある。9条の下でも核兵器の保有と使用は可能とする政府解釈 はこの歴史を顧みないものだ。

2 原子力基本法について
 原子力基本法は原子力分野の憲法である。1954年(昭和29年)の予算で初めて原子力予算が2億3500万円計上されたことから翌55年に同法が制定 された。同法第2条は「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その 成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。」と規定しているが、「原子力」とはNucLearだから核と同義語であり、核の研究等も同法の規制対 象となる。また、同条にみる「民主」「自主」「公開」は原子力利用三原則と呼ばれるもので、原子力利用は平和利用に限定して軍事利用に転用させない保障と なっている。この第2条は、日本学術会議第18回総会(55年)で採択し、政府に申し入れて採用されたものである。

3 非核三原則と核密約
 「持たず、作らず、持ち込ませず」の三原則は67年12月11日の衆院予算委で佐藤栄作首相が答弁したもの。71年11月24日の衆院本会議で決議さ れ、日本の基本方針(国是)とされている。しかし、核兵器を搭載した米艦船の寄港や領海通過、核兵器を搭載した米航空機の日本立ち寄りを事前協議は行わず 黙認するとの「核密約」がなされていたことが判明。政府は非核三原則の法制化に一貫して反対してきたが、その理由は核密約がバレたときは法律違反となるか ら。こうして、「持ち込ませず」は日本政府によってすでに破られていた。また、宗谷海峡、津軽海峡、大隈海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道の5つの国 際海峡の日本領海幅を12海里(約22km)ではなく3海里(約5.6km)にとどめている理由は、米艦船の核持ち込みを政治問題化させないためである。

4 NPT
 核兵器国(米・ロ・英・仏・中)には核軍備の縮小・撤廃に関する交渉義務がり、非核兵器国には核不拡散義務がある一方で原子力平和利用の権利保障がなさ れている。これがNPT三原則で、この条約の運用を検討する会議は5年毎に開催される。来年5月、国連本部でその検討会議が開かれる。

5 さいごに
 和田進教授によると、9条は天皇制とワンセットで制定された。天皇制を残す代わりに日本の再軍備を否定してアジアの安全を確保しようとしたもの。した がって、9条は日本の安全保障ではなくアジアの安全を確保するためのもの。また、米国は原爆投下によって救われた米国人は当初は数千人と発表したが、その 後数万人、数十万人と増え、最後は100万人。この理由は広島、長崎の被爆死者の実数が分かったから。しかし、この原爆正当化論はオバマ演説で否定され た。鳩山政権に求めるものは、1つは9条の下でも自衛のためには核兵器を「保有」「使用」できるとの政府解釈を変更させること、2つは非核三原則の法制 化、3つは「核の傘」から離脱して真の意味で非核の日本を実現すること、だと思う。なお、会場からの「テロリストに渡っても核兵器は使えないのではない か」との質問に対し、「そうだ。しかし水源地にプルトニウムを撒いて大量殺戮することは可能だ」と回答されたことを付言します。


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